自由記述欄

広く浅く履修するオタクの戯言。

2022 東宝版エリザベート

はじめに

2回公演を見た中で、印象に残ったところを雑多に書いています。

他に見たことのあるのは宝塚月組2005年の公演だけなのと、

元の歴史にもあまり詳しくないので、あくまで私が見に行った回から感じたことになりますので悪しからず。

 

ここ何年かは隔月〜多い時で月2本ペースで舞台を見ているのですが、

好みを抜きにした純粋な完成度という意味で言うと、過去一番の舞台だったと思っています。

特に前回帝劇で見たのが、どちらかというと初々しさがあり明るいローマの休日だったので、

重厚で熟した雰囲気の演目という感じが印象に残っています。

あとやっぱり生オケはいいですね。

特にエリザベートはほぼ全編歌が入っているミュージカルなので、

生オケであることの良さは十二分に生かされていたと思います。

 

1回目のところは各キャストさんの印象くらいしか残っていないので……

2回目の方でシーンごとのあれこれを書きたいと思います。

 

 

1回目 10/24 マチネ

正直ほとんど記憶がないというか、本当に3時間もあったか?ってくらい早かったです。

以前ケーブルテレビ(って今は言わないか)で宝塚版は見たことがあったのですが、

そもそも全体的な脚本やセットリストも違うので初見の気持ちでした。

 

シシィ(花總まりさん)

いやー、兎にも角にも美しい。

学生の頃にレディ・ベスで見て衝撃を受けたのですが、やはりお美しかったです。

ドレスの捌き方がうっとりするくらい美しく、またトートダンサーにリフトされた時に

糸吊りのお人形さんのようにふわっと浮いてくるくると回されていたのがすごいなあと。

また少女から皇后、さらには老いてからと、それぞれ全く違う演技ながら不自然さがなく、

特に皇后としての強さを見せる1部のラストは圧巻でした。

あまり詳しくないんですが、がっつりソプラノ音域というよりはもう少し低いお声なんですかね?

エリザベートの曲は全体としてはあまり高くないような気がするので、

本当に高音域が得意なタイプの方だと辛いんじゃないかなあと思っていたのですが、

どの歌も綺麗に歌い上げられていて流石だなあと思いました。

 

トート(古川雄大さん)

古川さんもだいぶ前に同じくレディ・ベスで拝見したことがあったのですが、

身のこなしの美しさでトートの人ならざるもの感がすごかったです。

あと子ルドルフに対する優しさが優しいが上に怖い。

美人の人さらいだ……と思いながら見てしまいました。

 

フランツ(田代万里生さん)

年齢ごとの演技と歌の変化に感動しました。

フランツの場合は特にシシィ以上に老いが顕著だと思ったのですが、

場面場面で細かい年齢感を出しておられるのがとても印象的でした。

ごく個人的な感想としては、若い頃の立ち方が誰よりも軍人さんっぽくてとても合っているなと思いました。

 

ルドルフ(甲斐翔真さん)

白馬の王子さまというよりはもう少し逞しい青年感がありました。革命しそう。

闇が広がるの時は結構抗っているような演技だったような(うろ覚え)

最後に自殺するときも、トートに導かれるようにというよりは

革命が失敗したことによる失望というか、ある種切腹のような責任感と苦しみを感じました。

 

ゾフィー剣幸さん)

強い!美しい!母!って感じでした。語彙力がない。

太后としてというより、母としての厳しさというのが強く出ている感じがしました。

個人的には前半の演技よりも、後半の病気を患ってからの演技に鬼気迫るものを感じて印象に残りました。

 

ルキーニ(黒羽麻璃央さん)

今までいわゆる2.5次元舞台で拝見していた俳優さんだったので、

帝国劇場の広い舞台で声を響かせていらっしゃる姿にじーんときました。

マイクが入っていないんじゃないかと思うような限りなく生に近い?声の響きで、

声を張ったり荒げたりするシーンが多い中、疲労感が全く見られず迫力がありました。

 

少年ルドルフ(井伊巧さん)

歌のお声がとにかく綺麗で、シシィを呼ぶ歌で本当に心が痛かったです。

自分が皇太子であることを理解していそうな、しっかりと強く凛とした雰囲気でした。

あとこれはマチネ限定の見どころなのですが、カーテンコールの際に

ルドルフ、ゾフィー、少年ルドルフが一緒にご挨拶をするんですよね。

ゾフィーがとてもにこやかに二人を見つめているところで涙腺が決壊しました。

私が見に行った回とは違うのですが、youtubeにもマチネのカテコ映像があります。

とはいえ……これは3時間の演目の後に見るからこそひとしおという感じはあります。

youtu.be

 

2回目 10/28 ソワレ

流石に2回目なので全体を見る余裕が少しできた気がします。

一部のキャストさんは同じだったのですが、違うキャストさんについてまずつらつらと書いていこうと思います。

ルドルフ(立石俊樹さん)

立石さんのルドルフは白馬に乗っていそうな王子さまでした。

トートとの闇に広がるがお耽美でしたねー。

個人的には花總さんシシィと田代さんフランツの息子は立石さんルドルフだなあと思ったので、

追々各シーンについて書いていこうと思います。

 

ゾフィー香寿たつきさん)

非常に厳格で怖くておっかない皇太后さまでした。

そりゃシシィも「私だけに」を歌っちゃうよ……と思いながら見てました。

威厳のある歌声がとても印象的で、大奥!というような雰囲気が印象的でした。

 

少年ルドルフ(西田理人さん)

個人的な印象ですが、まだあどけなさが十二分に残る少年らしいルドルフでした。

どちらかというとシシィに似ている雰囲気が強く感じました。

やっぱりママを呼ぶ歌は辛かったです。

子役の方のボーイソプラノで歌われるのがとかく心にきますね……。

 

お見合いシーン

ここからは印象に残ったシーンごとに思い出せる限り書いてみようと思います。

キャストさんごとの印象の差だったり、物語の解釈だったり、色々まぜこぜになってます。

 

さて、お見合いのシーンでは、ピンク色のいかにもお嬢様なドレスのお姉さんと対照的に、

若草色で少し丈も短いドレスのシシィがとても元気で可愛らしかったです。

シシィは落ち着かないというか、ちょっとバタバタしていて逆にそれが少女らしいというか、

花嫁修行を積んできたお姉さんと、自由人のお父さんに似たシシィの対比として印象的でした。

 

トートとシシィの邂逅

木から落ちたシシィをトートが助ける?ことで邂逅を果たすシーン。

臨死体験によりトートとの繋がりができるのかなあとぼんやり考えていましたが、

そうするとルキーニは死の前からトートの存在を感じ取れていたのか?という矛盾というか問題に当たるんですよね。

作中で、存命中に明確にトートの存在を認知しているのは

・シシィ

・ルドルフ

・ルキーニ(冒頭のセリフと物語の流れより解釈)

の3人なわけですが、この他にもトートが人間に扮する形態があり、

これについては一般市民を含めた多くの人が認識できているという実態があり。

考え方は如何様にもあると思うのですが、シシィがトートを感知し黄泉の国との繋がりを持った一方、

トートはトートでシシィを通して地上との繋がりみたいなものを手に入れたのかなあと思っています。

 

結婚式

シシィのお父さんが、娘が心配+寂しさもあってか明らかにしょぼくれてるのが面白いです。

お姉さんの方がお嫁に行く覚悟はできていても、シシィはしばらくまだ手元にいるだろうと

思っていたんでしょうか、娘は嫁にやりたくない……という感じにあふれてました。

そこからのトート登場、まだこの時点ではシシィがトートに振り回されてますね。

 

皇后の務め

元々が迫力のある歌ということもあり、特に香寿さんの回はゾフィーの厳しさ、

シシィから見た怖さのようなものが強く出ているように感じました。

怖いんですけど「ごもっとも!」のところはユーモアがあって結構楽しいです。

 

私だけに

音源としては耳にしていましたが、実際生で聞くと圧巻でした。

10/24 マチネの時よりも10/28 ソワレの時の方が、歌により気持ちが入った強さがあり、

シシィの決心がより強く現れているように感じました。

(感情的な表現を優先するか、音程やリズムの正しさを優先するかは人それぞれだと思いますが、個人的にはこの歌の場合、気持ちがより強く入った方が聞いていて感情が揺さぶられました)

 

籠の中の鳥

ちょっと順番を忘れてしまったのでここで書いておきます。

ルキーニがおもちゃの鳥を飛ばして、シシィの息苦しさと籠の中(宮廷)では生きていけないことを示すシーン、

1回目に見たときは恐らく想定通り鳥が少し飛んで落下したのですが、

2回目では予想外に綺麗に飛んでしまい、奥の舞台セットの裏側まで飛んで行ってしまいました。

ルキーニが鳥を眺めながら「自由だなあ……」みたいなことを言っていたのですが、

あまりにもよく飛んで目で追えなくなるレベルだったので観客もこらえきれない感じでした。

生ならではの予想外の面白ポイントになってましたね。

 

最後通牒

弱ったフランツがシシィに求めるシーン。

1回目の観劇が下手側、2回目が上手側だったのですが、

全体としては、中心から上手側から見た方がより俯瞰に近い感じがしています。

が、このシーンは個人的には下手側から見た方が好きでした。

扉越しにシシィと話すフランツをやや背中側から見ることになるので、

なんというかこの時点でのシシィのフランツに対する優位性が感じられました。

(背中から見ているため、ちょっとフランツが情けなく見えるという点も含め)

 

逆に、トートが登場してからは上手からの方が良かったですね。

特に2回目は全体的に感情の抑揚が強めに出る歌い方をみなさんしてらっしゃったので、

シシィの鬼気迫る決意表明と、それに少し驚きつつ反面楽しそうにも見えるトートが印象的でした。

 

ミルク・キッチュ

ちょっと順番違うんですが概ね同じ感想なのでまとめて。

いやー、ルキーニがものすっごく良かった。

ルキーニは衝動的というか、色々な感情を見せてくれるのが見どころのひとつだと思うのですが、

市民を小馬鹿にするように煽りつつ、統治者に対する憎しみのような表情に変わったり、

また思い切りのいいコミカルな演技など、色々な面が見られてとても面白かったです。

ぜひ生で見て欲しいしもう一回見たいんですが、

既に2回とも有給で見ているので、スケジュールとチケットが……。

(執筆時点ではごく一部の平日の回のみ、1F?の補助席が出ていることを確認しています)

 

1幕ラスト

シシィのあまりの美しさに2回とも大号泣で全然記憶がないんですよね……。

豪勢な衣装に全く負けていない、凛とした美しさが素晴らしかったです。

こう、ものすごく感動的なシーンというわけではないと思うのですが、

シシィのあまりの存在感に涙が出ました。

フランツ・ゾフィーの親子に対して、そしてトートに対しての勝利宣言だと思うのですが、

このワンシーンを見に来たとさえ思えるほど、花總さんの存在感は圧倒的でした。

女帝ではなく、あくまでお姫さま的な美しさと言いますか……。

恐怖にひれ伏すのではなく、まさしく美貌に屈服するといった、そういう存在感でした。

 

ハンガリーエリザベート

この時のシシィは自信に満ち溢れていることもあり、圧倒的な美貌という設定も頷ける美しさだと思います。

個人的にはエーヤンの曲が好きなのですが、場面の持つ情報量が多く

(シシィとフランツ、ルキーニ、反体制派+トート)あっという間に終わってしまいました……。

 

私と踊る時は

トートに対するシシィの態度が、捕まえられると思った?そんなに容易く手に入る女じゃないわ、という強さに溢れていて、

けれどトートも少し嬉しそうな、お互いにちょっと捻くれた感じが味を出していたように思います。

この時、気まぐれな少女のように振舞ったり、かと思えば意志の強さを見せたりと、

(少女の頃の自由な感じがトートは好きだったと思っているので)翻弄するシシィが見応えありました。

ちなみにここはゲネプロ映像で見れます。最高です。

youtu.be

 

少年ルドルフとトート

猫を撃った(殺した?)と言った時のトートの表情が、こんな子がそんなことをするのかと言いたげな驚きの表情で、

けれどルドルフはそんなことを意にも介していないところが個人的に好きでした。

シシィの息子(おまけ?)くらいにしか思っていなかったトートが、

ここでルドルフにも興味を示した感じがしました。

 

精神病院

初見の時は順当に偽エリザベートとシシィのやりとりを見ていたのですが、

2回目の観劇でこのシーン実はルキーニもかなり面白いなと思いました。

エリザベートを煽るような素振りやシシィを睨むような表情もあれば、

逆に偽エリザベートに対して呆れた表情を浮かべたりと、

ルキーニ自身の感情の不安定さみたいなものも一緒に表現されていたように思います。

ただ情報量が多くルキーニの心情については理解しきれなかったので、

円盤ではかなり確認が難しいところになってしまうことも含め

できることならもう一度現地でじっくり見たいシーンでもあります。

 

闇が広がる

これは完全に個人的な感想なのですが

花總シシィと田代フランツの息子としての立石ルドルフがあまりにも脚本とマッチしていて、

この曲の際のルドルフの痛々しさというか、

皇太子としてだけではない生まれ育ちの特殊さが際立つように感じました。

母の類まれな美しさと、父譲りの頭脳を持ちながらも、

母が嫌った保守的な世界でその能力を活かせないもどかしさ、

既に父が皇帝になった年齢を過ぎてもなお、父が存命であるが故に皇帝になれない現実、

幼い頃から多くの人たちの思惑の中で翻弄された哀れな雰囲気みたいなものが、

ひときわ滲み出ていたような。

 

恐ろしい存在であるはずの「死」でありながらも反面、

美しくたおやかで魅了される古川トートとのバランスも素晴らしく、

他の組み合わせにもそれぞれの良さがあるのはもちろん承知の上ですが、

ごく個人的に円盤収録されて欲しい組み合わせだったりもします。

 

立石ルドルフは花總シシィに似ている面が多いように見えるのですが、

最大の違いとしては意志の弱さ、自己の希薄さが田代フランツ似だなと感じました。

歌のラスト「皇帝ルドルフは立ち上がる」でも、全くひとりでは立てていなくて

トートに言われて皇帝になる覚悟を決め(決まっているのか微妙ですが)

なんとかやっと立ち上がった、という感じがして、

まさしく悪い大人に騙されたおぼっちゃまという構図だなと思いながら号泣していました。

 

ルドルフとシシィ

ルドルフが最後まで誰からも心からは必要とされていないという感じがして見ていて辛かったです。

ルドルフも何が特別に出来が悪いだとかそういうことでは無いと思うのですが、

太后の厳しい子育ての中で育ち自身も歩み寄ることができなかったフランツ、

太后から主導権を取り返したことで満足してしまったシシィの元で、

皇太子としてあるべき姿のみを示され、思想を反体制派に利用されてしまい……。

運がなかったの一言で済ませるには、ルドルフの人生はあまりに過酷で涙無しには見られませんでした。

 

ルドルフの死

トートにキスをされた失意のルドルフが、銃を片手に自ら命を絶つシーン。

かなりうろ覚えなのですが、初回の甲斐ルドルフが最後まで苦しみ、

抵抗しているようにさえ見えるような表情ながらも引き金を引いているのに対し、

立石ルドルフは革命が成功しなかったことか、はたまた母から見捨てられたことか、

諦観したような顔で目を閉じて引き金を引いているという、かなりの差があるシーンでした。

(本当にうろ覚えなので違ったらごめんなさい、割と記憶違いはやるタイプの人間です)

 

ラストのシシィのシーンも含め、トートのキスは直接に死を表すものではなく、

死の前兆というか、誘いに過ぎないのかもしれないなと思っています。

それを拒むこともなく、受け入れてしまうような人間だけが死んでしまうのかなと。

そして生を奪われてなお、トートも満足したというよりは通過点くらいの

あっさりした雰囲気なのがルドルフは本当に可哀想です……。

 

夜のボート

ここ、フランツは割とシシィの方を見ながら歌うんですが、シシィは全く見ないんですよね。

答えもあっさり「無理よ」と冷たく返す感じで。

シシィは最後まで大人になりきれず、純粋な少女のようなところを持つが故に

数々の問題行動を起こしている気がするのですが、

そんなあどけないところが好きなんですよね、トートは。(個人の感想です)

 

エリザベート襲撃、そして死

失意の旅を続けるシシィがルキーニの襲撃を受け、死を迎えるシーン。

ルキーニの通り魔的な、割とあっさりとしているが故に残酷さが伺えるシーンでした。

 

最後のシシィとトートについて、これは単なる妄想なんですが

シシィが黒装束を脱いで白い衣装に変わった後からは、これはトートの幻想なんじゃないかと思うんですよね。

ちょっと記憶違いだったら申し訳ないのですが、このシーンではシシィがさほど老け化粧をしておらず、

時系列的には結婚〜1幕ラストあたりの、ちょうどトートがシシィへの執着を

強く見せているあたりと同じくらいのお化粧をしているように見えました。

曲として使われている「私だけに」とまさに同じ時期の衣装で。

また、髪型も喪服の時の結い上げとは異なり、倒れた瞬間に長い髪が広がる、

これは木から落ちたシシィと初めて出会った時のイメージなのかなと。

 

トートが本当に好きだったのは、長く旅をして現実から逃げ惑うシシィではなく、

自由を好み、自由を求めて闘い、自由を得た、そんなシシィなんじゃないかなと。

だからこそ今のシシィではないシシィの幻想を見ながら、

そして死の誘いであるキスをし、既に襲撃により命が尽きかけていたところから本当の死を迎えたシシィを目の前にし、

酷く驚いたような、そんなはずではなかった、とでも言いたげな表情だったのかなと。

トートが欲していたのは、あの頃のシシィそのものだったが故に、

死を迎えたシシィを素直に受け入れることができなかったんじゃないかと、そう感じました。

 

あとラストのシーンの歌って色々な時期の曲がつながっていると思うんですが、

特に「あなたには頼らない」とシシィが言い切ったシーンの曲も使われているんですよね。

あえてこの曲で「連れて行って」とシシィに言わせるトート、中々に拗らせているような。

 

ラスト、どうしてもシシィとトートを見てしまうせいで、

現地に見に行った2回が2回ともルキーニが首を吊るところを見逃しました。

既に7〜8台のカメラが入る規模の撮影日をTwitterで複数回確認しているので

円盤収録に全景映像も入らないかなあと思う今日この頃です。

 

おわりに

時間とお金と何より運が許すならあと2回は見たかったです。

花總さんがシシィとしては最後?という話もちらっと出ていますが、できればもう何回か見たいですね……。

何書こうとしてたか忘れてしまったので終わりにします。おわり。